logo
Published on

ソフトウェア特許を読んでみると案外おもしろい

Authors
Patent Image

Claude Codeの登場から一段と開発のコストが下がったように感じています。

これまでCopilotやClaude Desktopをもちいて開発していたのですが、タスク分解の精度や吐き出すコードのクオリティ自体も他のものよりも高く、だいぶん開発の効率が上がったように感じています。

こうした背景もあり、一段と自分で開発したいものが増えてきました。

私の場合はtoC/toB問わずいろいろなプロダクトを開発していきたいのですが、本職でも多少特許絡みの話がでていたので今回はそこで感じたことを雑にメモしておきます。

ソフトウェアエンジニアは特許を意識すべきか?

ソフトウェアエンジニア(以下エンジニア)の立場からすると、特許というのはあまり一般的ではないものだと思います。

そもそもOSS文化な世界で、「開発したものを広く公開し、みんなでより良く、より便利にしていく」という価値観もある世界なので、他者の介入を排除する特許という考えは馴染まないんでしょうか。

ただだからといってエンジニアでも特許を意識しないでいいかというと、そういうわけではないです。

結局ビジネスありきで食べている以上、「ソフトウェアにも特許はある」という前提をもっておくことは必須だと思います。

正直エンジニアからすると「それ特許取れるの??」と思うようなものも多いと思いますが、最近のスタートアップでもよく見るようになってきています。

実際、日本の特許情報を検索できるJ-PlatPatで最近の有名どころの未上場スタートアップを調べてみると、特許を取得している企業が多いことがわかります。

SmartHRLayerXテックタッチRevCommなど、特許を取得している企業は思っている以上に多いかもしれません。

ただ実装だけしているエンジニアであれば特許を意識することは少ない/必要ないかもしれませんが、プロダクトの企画やビジネスモデルを考える立場にいるエンジニアであれば、特許の存在を意識しておくことは重要でしょう。

しらずに実装してしまうと特許侵害のリスク、まだまだ小さなスタートアップの場合には事業継続性の問題にもつながります。

開発にあたっては競合調査などもすることも多いと思いますが、可能な範囲で特許の調査も行うと良いでしょう。

エンジニアとしての特許からの学び

ビジネス観点でみると、特許はなかなか厄介な存在です。

提供したい機能に関係する特許が取得済みであれば、請求項を確認しながら抵触しないか意識して開発を進める必要があります。

ただすでに特許化されていることもあり、最適な実装方法から考えると請求項に抵触する可能性も大いにあります。そのため特許を意識しつつ、ややUXを犠牲にしてでも特許侵害を回避する実装を行う必要があるかもしれません。

しかし、特許は単にビジネス上の障害物ではなく、技術的な学びの宝庫でもあります。

気になるスタートアップが提供する機能の実現方法であったり、特定の技術的な課題に対する解決策を知ることができます。

エンジニアは純粋に技術面への興味関心が高い人が多いと思いますが、実際に特許の内容を読むことで、技術的な背景や実装の工夫を学ぶことができ、エンジニアとしての幅を広げる機会にもなります。

何でもかんでも読むことはなかなか難しいですが、特に興味ある分野や転職などを考えている分野の特許を調べてみると、意外と面白い発見があるかもしれません。

特許情報からの学び方

特許情報は先にあげたように、J-PlatPatやGoogle Patentsなどのサイトで検索できます。

特許はその性質上、技術的な詳細が記載されています。

記述の内容はなかなか専門用語や法的文書であるので非常にとっつきにくいのですが、AIも活用することで相当読みやすくなりますし、具体なイメージも持ちやすくなります。

J-PlatPatでは特許ごとに特許に関する文献をPDF化できるので、興味のある特許を見つけたらPDF化したり必要な部分をコピペしてAIに読み込ませると良いでしょう。

なかなか量も多いので、Gemini 2.5 Pro などコンテキストウィンドウの大きなAIを使うのがよいかもしれません。

私は特許情報をAIに読み込ませて技術的な質問をすることもありますが、特許に抵触せず機能実現する方法を探るようなこともやったりします。

特許は請求項と呼ばれる部分で、特許の保護範囲が定義されています。(私は法律の専門家ではないので正確な部分は各自調査するなり専門家に頼るなりしていただきたいですが、請求項の内容を理解することは特許を読む上で非常に重要です。)

特許は「オールエレメントルール」という特許請求項の構成要件のすべてを備えていなければ特許侵害にはならないというルールがあります。

そのため請求項の1つでも満たさない場合には特許侵害にはならないのですが、特許の請求項をAIに読み込ませ、かつ自分が実現したい方法も読み込ませつつ、「どの程度抵触しているのか」「どうすれば抵触しない形で実現できるのか」などを探ってみたりします。

あくまでAIの回答なので正確性は保証されませんが、特許の内容を理解する上では非常に有用です。

複数の実装方法・実現方法を考える練習にもなるので、そうした点でも気になるプロダクトの特許を調べてみると良いかもしれません。

特許の検索方法

  • J-PlatPat - 日本の特許情報を検索できる
  • Google Patents - 世界中の特許情報を検索できる
  • USPTO - アメリカの特許情報を検索できる
  • WIPO - 国際的な特許情報を検索できる
  • Espacenet - ヨーロッパの特許情報を検索できる
  • 特許庁 - 日本の特許庁の公式サイト
  • PatentScope - WIPOの特許情報を検索できる